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ハムスター(独: hamster)は、キヌゲネズミ亜科に属する齧歯類の24種の総称。夜行性で雑食性である。肩まで広がる大きな頬袋を持つのが特徴。狭義にはもっぱらゴールデンハムスター(別名シリアンハムスター)をさす。野生のゴールデンハムスターは絶滅が危惧されているが、飼育・繁殖が容易であるため、ペットや実験用動物として繁殖されて知名度は高いが、ストレスに弱いためペットには向いていない。1930年の春、シリアのアレッポで、イスラエルのアハロニ教授が小麦粉畑の土の中で発見した。

1956年、ゴールデンハムスターが風邪に感染することが発見され、風邪に関する研究が大いに発展した(それまで、風邪のウイルスに高い感受性を示す小型の実験動物は知られていなかった)。

語源

日本語の「ハムスター」はキヌゲネズミの様々な種を指すが、元はゴールデンハムスターの俗称・通称として一般人に定着したものであり、ドイツ語や英語のゴールデンハムスターであるhamsterに由来している。

古高ドイツ語には、hamustraという単語があり(元々1000年頃にコクゾウムシの意味で使われていた古い単語であったが)、1607年にはハムスター(クロハラハムスター)という意味で使われており、ヨーロッパに広く生息していたクロハラハムスターの語源となった。しかし、実験動物用としてドイツにゴールデンハムスター(独: Syrische Goldhamster)が伝来して増え、ゴールデンハムスターがHamsterの代名詞にとって変わった。

古高ドイツ語のhamustraにはもともと「強欲で大食い」というニュアンスがあり、一説として、その語源は古ロシア語のhoměstrǔあるいは、ペルシア語のhamaēstar(「圧迫者」)に由来していると説明されている。

ドイツ語の「買いだめする、溜めこむ」という動詞ハムスターン(独: hamstern)は、hamsterの貯食の習性から相手を揶揄する言葉として派生した。

特徴

外見

地中生活に適応するため、体はずんぐりとしており、四肢も尻尾も短く進化している。ドワーフハムスターでも尻尾は毛皮の下に隠れてしまいほとんど目立たない。ただし、チャイニーズハムスターにはハムスター類で最も長い尾(2.8-3.1cm)があり物をつかむような機能をもつ。

左右にもともと口腔が陥没してできた頬袋(cheek pouch)と呼ばれる袋(盲嚢)をもつ。頬袋には伸縮性がありエサを収容しておくためのものである。

ゴールデンハムスターやドワーフハムスターには臭腺がある。

歯式は2 (1003/1003) の16本で、犬歯は退化し、2本の切歯(門歯)が一生伸び続ける。エナメル質が作られるときに銅などを取り込むため切歯の色は黄色である。

体重は、ジャンガリアンハムスターは30-50g、ゴールデンハムスターで80-150g。ハムスターの中で最も大型になる種はクロハラハムスターで、その体重は250g-600gに達する。寿命はジャンガリアンハムスターで2年、ゴールデンハムスターで3年ほどであるが、稀に5年生きた個体などが報告されている。

習性

頬袋に餌を詰めるハムスター

野生ではヨーロッパからアジアの乾燥地帯に分布。夜行性で地中に掘ったトンネル内を餌を探すために一晩に10km - 20kmを移動しながら生活している。野生のハムスターは、1日のほとんどを巣穴の中で過ごし、捕食者を避け明け方と夕暮れの短い時間のみに餌を探しに出掛ける。ハムスターは穴掘りの能力に優れており、複数の入口に、寝床、食料の貯蔵庫などの様々な部屋が繋っている巣穴を掘ることができる。野生のゴールデンハムスターは数が少なく絶滅が危惧されている。

頬袋に餌を収納し、一杯になるとその袋は2倍から3倍にもふくれ上がることがある。ここに溜めた食料を、自分の巣穴で吐き出して貯蔵する習性がある。食性は穀食を中心とした草食性に近い雑食性で、野生状態では、木の実、穀物、野菜、果物、また昆虫やミールワームなども食べる。飼育時に適したエサについては下記参照。ハムスターは時に自分の糞を食べることがある(食糞)。これは、一度では消化しきれなかった養分をもう一度吸収するためであり、異常行動ではない。

ハムスターの視力はあまり良くなく、また色盲である。そのため、外界の状況の把握は聴力と嗅覚に頼っている。臭腺の臭いを周りに散布することでなわばりを主張するとされており、特に自身の臭いに非常に敏感である。また、高周波を聴くことができるといわれており、超音波で互いにコミュニケーションしているとも考えられている。

餌不足、短い日照時間、低温などの環境に置かれると疑似冬眠と呼ばれる状態になることがある(ただし最長でも5日 - 6日で餌をとる)。飼育下のハムスターだと疑似冬眠からうまく目覚めることができず、そのまま死んでしまうことがある。

性格はゴールデンハムスターなどでは体の大きいメスのほうがオスよりも気が強く、特に繁殖期などは飼育に注意を要する。

ゴールデンハムスターは縄張り意識が強く、一般的には1匹で生活する。縄張りを侵すと殺し合いのケンカをすることもある。一方、ドワーフハムスターと呼ばれる小さめのハムスターは、同種で、気が合えば2匹以上一緒に生活することもありうる。

草原や川岸に生息する野生種のクロハラハムスターは、泳ぐ能力があり、頬袋に空気を貯めて浮き袋にする習性がある。この習性は、元々砂漠地帯に生息していたゴールデンハムスターにも存在し、雨季の洪水などで水に落ちると、頬袋を膨らませて短時間ながら泳ぐことが確かめられている。

ハムスターが繁殖可能になる年齢は、種類によって異なるが一般的には月齢で1か月から3か月で交配可能となる。メスのハムスターの交配可能な期間はおよそ3年であるが、オスはもっと長いこともある。規則的な発情期を持つ。4月から10月に、2週間から1か月の妊娠期間の後、10匹前後の子を生む。ゴールデンハムスターは齧歯類の中でも特に性周期が安定しており、メスは4日の周期で発情を繰り返す。発情したメスは、背中側のお尻周辺を触ったり、甘噛みされると、尾を上げ交尾姿勢を取る。

繁殖

生後間もないハムスター

また、種の違うもの(ゴールデンハムスター×ジャンガリアンハムスター、ジャンガリアンハムスター×キャンベルハムスターなど)の交雑は、基本的に不可能であり、妊娠したとしても母体・子供に危険が及ぶ確率が高いが、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターを交雑させたものは一般のペットショップにも出回っていることがある。